20260405

日本で受けた差別 その2

 同じ飲み会の席に、もう一人のタイ人がいた。ここではポールとしておこう。

ポールも日本旅行の話をしていた。ただ、話の内容が、いまいちよくわからなかった。

「屋台でゴミを捨てたら、めちゃくちゃ怒られた。差別だ。」

以上である。

それだけ言って、ポールは話を終えた。私は「ふーん、そうなんだ」くらいにしか思えなかった。正直、意味がよくわからなかったのだ。ゴミを捨てたら怒られた。なぜ? 差別? なぜゴミを捨てて差別されるんだ? 話がつながらない。


謎が解けたのは、帰宅後だった。

ぼんやりとポールの話を思い返していて、ふと気づいた。

「あ、ゴミ箱、なかったんじゃないか。」

そうだ、日本のお祭り会場にはゴミ箱がほとんどない。 ゴミは持ち帰るのが基本だ。でもポールはそれを知らない。だからゴミ箱を探した。見つからない。よく見ると、屋台の中、店主の後ろにゴミ箱がある。じゃあそこに、と屋台の中に入って捨てた。そうしたらテキヤのおっちゃんに怒鳴られた。——おそらく、そういうことだったのだ。

でも、ポールは私に「ゴミ箱がなかった」とは言わなかった。本人にとっては些細なことだったのか、それとも無意識に省略したのか。とにかく、「捨てたら怒られた」しか伝わってこなかったから、飲み会の席では話がまったくつながらなかった。


もちろん、ポールに悪気はない。ゴミをその辺に投げ捨てたわけではなく、ちゃんとゴミ箱を探して、あったから捨てた、というだけの話だ。

ただ、屋台の中のゴミ箱は店用で、客が勝手に使うものではない。そもそも屋台の中に客が無断で入ること自体、ありえない。テキヤのおっちゃんからすれば、見知らぬ外国人がいきなり店の中に入ってきた、ということになる。そりゃ怒る。

そして、ジョンの話と同じで、ポールもお金持ちだ。タイでは屋台の店主が客に怒鳴るなんてことはまずありえないし、「屋台のおっさんになんで怒鳴られなきゃいけないんだ」という感覚もあったかもしれない。

文化の違いによるすれ違い、それだけの話なのだが、ポールの中では「日本で差別された話」として記憶されている。そして私の中では、飲み会の席ではよくわからなかった話が、家に帰ってからようやく解けた謎として残っている。