20260404

日本で差別されたタイ人友人

タイ人友人グループで定期的に飲み会をやっている。友人と言っても、インターナショナルスクールの親同士のつながりで、同学年の子供たちを持つ親のグループだ。小さい頃は旅行にも行ったが、子供たちはもう高校生。さすがにこのグループ全員で旅行、というのはなくなってきた。ただ、飲み会は続いている。

このグループのタイ人親たちは、偶然にも全員、アメリカで過ごした経験を持つ。自分たち夫婦もアメリカで大学生活を送っていたので、そこがまた気の合うポイントでもある。


この前の飲み会で、タイ人の友人——ここではジョンとしておこう——が、日本旅行の話をしていた。

ちょっとしたお金のあるタイ人にとって、今や日本旅行は大人気だ。「行ったことある」レベルではなく、もう何度も行っている人がざらにいる。円安の影響もあって、日本はタイ人にとって「安くてお得な旅行先」になっているのだ。まあ、ある程度お金のあるタイ人の間での話ではあるが。

で、ジョンが言うには、日本で差別されたというのだ。

よくよく聞いてみると、神戸の高級ステーキ屋(鉄板焼きスタイルで、カウンターに横並びに座るタイプの店)に入ったところ、店員から「ガイジン」「ガイジン」と言われて、嫌な顔をされたとのこと。

少し信じ難かったので、さらに詳しく聞いてみた。状況をまとめると、


高級鉄板焼き店

カウンター横並びスタイルで、他のお客さんも隣にいる

「ガイジン」と言ったのは、ジョンたちに直接ではなく、他のお客さんに向けて

ジョンの子供も一緒にいた


ここまで聞いて、なんとなく謎が解けた気がした。


ぶっちゃけ、ジョンの子供は、お世辞にもおとなしいとは言えない。スマホやタブレットで動画やゲームをやる時も、音はそのまま周囲にダダ漏れ。じっとしているタイプでもないので、店内をあちこち歩き回っていた可能性は高い。

日本の高級ステーキ店で、それをやられると、他のお客さんへの迷惑は相当なものだろう。おそらく鉄板の向こうの店員さんが、困り果てて隣の日本人客に向かって、「すみません、外国の方なので…(苦笑)」みたいなことをこっそり言ったのだと思う。そのとき「ガイジン」という部分だけをジョンが聞き取ってしまい、差別されたと感じた——というのが、私の見立てだ。


ただ、これはジョンにも、その子供にも、まったく悪気はない。

なぜなら、タイでは子供が騒いだり店内を歩き回ったりするのは「普通のこと」で、誰も注意しないからだ。日本人の感覚からすると行儀が悪く映るが、タイ社会では子供にはおおらかなのだ。

もう一つ、タイには表立った階級制度こそないものの、「客は上、店員は下」という暗黙のヒエラルキーが根強く存在する。店員が客に何か注意する、なんてタイではまず見かけない。だからジョンも、「なんで店員が俺に口出しするんだ?」という感覚があったかもしれない。

つまりジョンが覚えているのは「差別された記憶」ではなく、「店員に何か言われた、腑に落ちない記憶」なのだと思う。

実際のところはおそらく——差別でもなんでもなく、他の日本人客への迷惑を気にした店員が、英語も話せないし本人には言えないしで、苦肉の策として隣の客に「いやあ、すみません、外国の方なもので…」と苦笑いしながら言った、それだけの話なのだと思う。