Grabのドライバーは実に多種多様である。その多様性は、日本の感覚からすると驚くべきレベルにある。
先日乗車したのは、バンコクへ出稼ぎに来ている南部のドリアン畑のオーナーだった。息子さんがバンコクの大学に通っており、学費を稼ぐのが大変だと、親しげに苦労を語ってくれた。スマートフォンの画面で、誇らしげに自身のドリアン農園の様子を色々と見せてくれたのは、印象的だった。田舎の人特有の、フレンドリーで人懐っこい雰囲気を持った方である。南部の農園...。つい最近の豪雨で被害はなかったか、少し気になるところではある。
この農園オーナーのようにフレンドリーな人もいれば、大半はニュートラルな態度か、中には少し威圧的に感じられる人もいる。特に渋滞するスクンビット通りなどを走る際、彼らは常に周囲の車と小さなバトルを展開しているようだ。煽り運転や、反対に煽られる場面が多く、助手席に座っていると、車酔いしそうになるほどの緊張感がある。私が助手席に乗るのは、ほとんどの場合、妻と子どもが後部座席を利用しているからだ。
彼らの運転ぶりは、もし日本の運転適性検査を受ければ、間違いなく不合格のレベルにあるだろう。日本の適性検査には「追い抜かされると、腹立たしく思うか」といった質問が必ず含まれている。建前上「No」と答えるのが正解だが、日本人ドライバーの多くは、実生活でも概ね冷静さを保っている。しかし、タイ人のドライバーに見られる、このあからさまにうちに秘めた闘志は、時に恐ろしくさえ感じるものだ。運転中は、ドライバー同士がかなりいがみ合っているのが実態である。
ところが、ひとたび車を降り、実生活に戻れば、彼らはすぐに笑顔を見せる人々だ。いつも笑っている。つまり、いがみ合うか、笑顔か、そのどちらかの極端な顔を持つ人々であると言える。
Grabやタクシーの車内では、客を乗せているにもかかわらず、ドライバーが平然と私的な電話をしたり、動画を視聴したりしている場面に遭遇する。正直、ぞっとする光景である。もちろん、注意をすれば、逆上される危険性が高いため、危ないと思いつつも、放っておくしかないのが現状だ。
🎲 Grabはまさに「ドライバーガチャ」である
もちろん、優秀で親切なドライバーも確実に存在する。そういう意味で、Grabの乗車体験は、まさにドライバーガチャの要素が強いと言える。車に乗り込むたびに、今日の当たり、あるいはハズレが決定するのだ。
遭遇したドライバーの例を挙げれば、この多様性が理解できるだろう。
- ドリアン畑のオーナー:副業で学費を稼ぐ親心。最も心温まる「当たり」の一つである。
- 元タイ航空のパイロット:コロナ禍でフライトがなくなり、生計のためにGrabを始めたという経歴の持ち主。丁寧な運転と、たまに聞ける空の話題は貴重だった。
- ゴーゴーバーのおねいちゃん:夜の仕事の前に、少しでも稼いでおこうというプロ意識か。化粧が濃く、車内に独特の香水が漂っているのが特徴である。
- 駐在員専属のベテランおじさん:普段は日本人駐在員の送迎をしており、その駐在員が出張でいない時だけGrabで小遣い稼ぎをしている。こちらが日本人だとわかると、急に日本語で話しかけてくる。「ここは高橋さんのコンドだ」「あそこのゴルフ場は良かった」など、妙に日本の内輪ネタを披露してくるが、私には全く関係のない情報である。
- YouTube視聴中のふくよかなおばさん:後部座席の私に気遣うことなく、大音量で**日本の『ドラえもん』**の動画を延々と流し続けている。運転への集中力が心配になるレベルである。
日本の社会では、安全面や接客の面で到底成立しないと思われるような状況が、ここでは日常的に起こっている。
だが、これこそがタイのリアルだ。**「これもタイだから、OK」**と、肩の力を抜いて受け入れるしかないのだと、日々学んでいる。
BKK -KOKO
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