20260331

空室という名の「金庫」— なぜバンコクの家賃は下がらないのか

 バンコクに暮らし始めて、もうすぐ10年になるKenがお届けするブログ

前回の「人口シフト」に続き、今回はバンコクの不動産市場という「歪んだ聖域」について記したい。日本人駐在員が去り、空室が目立つプロンポンやトンロー。市場原理に従えば家賃は暴落するはずだが、現実はそう甘くない。そこには、日本企業の凋落と、タイ富裕層の底知れぬ論理が交差している。

1. 崩壊した「不当な高値」の支え手

かつてこのエリアの家賃相場を支えていたのは、日本企業の「潤沢な住宅手当」という名のバブルであった。実勢価格を無視した強気の家賃設定も、会社の経費で落ちるとなれば、誰も疑問を呈さなかった。

しかし、長引く日本の不景気に、記録的な円安バーツ高が追い打ちをかける。コストカットの荒波に晒された日本企業には、もはやこの「不当な高値」を支え続ける体力は残されていない。家族帯同から単身への切り替え、あるいは住宅手当の抜本的な見直しにより、かつての主役であった日本人家族は、住み慣れた「聖域」を追われ、日本への帰国を余儀なくされているのである。

2. 資産は「収益」ではなく「貯蔵」である

普通に考えれば、店子が去れば家賃を下げてでも埋めようとするのが経済の常石だ。だが、タイの本当の富裕層にそのロジックは通用しない。彼らにとっての一等地コンドミニアムは、家賃を稼ぐための「商品」ではなく、インフレから資産を守るための「金庫」に近い。

キャッシュで複数ユニットを保有する彼らにとって、数ヶ月、いや数年の空室など誤差に過ぎない。むしろ、中途半端な客を入れて内装を傷められるくらいなら、家賃を下げて物件の格(ランク)を落とすことの方が、彼らの「面子」に関わる死活問題なのである。

3. 日本人の感覚では計り知れない「オーナーの論理」

日本人の感覚からすれば「空室=損失」だが、タイのオーナーたちの頭の中はもっと冷徹で、かつ壮大だ。 「家賃を下げてまで、自腹で住む欧米人や日本人の機嫌を伺う必要がどこにある?」 彼らの視線は、もはや困窮する日本人など見ていない。

都心の物件を空室のまま寝かせておく一方で、彼らはその資産価値を担保に、地方の土地に新たなムーバーン(分譲住宅)や低層コンドミニアムを建設する。未利用地への課税を逃れるための節税対策として、あるいはさらなる資産防衛の一環として。彼らにとって不動産は、我々の想像を絶する巨大な「節税スキーム」の駒の一つにすぎないのである。

4. 箱庭の崩壊と、異邦人としての目覚め

私たちが住んでいたあの街は、結局のところ、日本企業の住宅手当バブルが生み出した、極めて特殊で歪な「箱庭」であった。その魔法が解けた今、残されたのは「日本人の手が届かなくなった高級物件」と、それを平然と放置する「タイ人オーナー」の構図である。

不動産という鏡を通して見えてくるのは、かつての経済大国として振る舞っていた日本企業の凋落と、それを冷ややかに見つめるタイ富裕層のしたたかな計算だ。我々はこの現実を直視し、特権を失った一人の「異邦人」として、この街の新しいルールに適応していかねばならない。

20260330

絶滅するファミリー駐在、サムロンの屋台へ消える若き日本人

 バンコク在住もうすぐ10年のKenがお届けするブログ

前回の「食」に続き、今回はバンコクの「居住地図」と「人口動態」の地殻変動について記したい。かつて日本人が集ったスクンビットの聖域は今、物理的にも構造的にも、その姿を大きく変えようとしている。

1. 「ファミリー駐在」という種の絶滅と、ASEANの再編

かつて、プロンポンやトンローの街角には、日本人家族の姿が溢れていた。もちろん、今でも、その面影はあるが。しかし今、

20260329

さらば「東京都バンコ区」— タイ人富裕層が塗り替える、日本食の真価

バンコクに暮らし始めて、もうすぐ10年になるKenがお届けするブログ。

バンコクの中心のオフィスで仕事をした日々。日本人コミュニティでも、夜な夜な遊んだ日々。バンコクの裏側を見つめ、バンコクの街を歩き続けてきた。この10年で、この街の風景は劇的に変わった。かつて「東京都バンコ区」と呼ばれた、日本人が日本人のために作った聖域は今、

20260304

周期リバイバル、レトロ回帰のバンコク

なんだか知らないけど、最近、バンコクの街中でよくモンチッチを見かける。まあ、モンチッチはいかにもタイ人が好きそうな、ゆるっとしたキャラだと思う。
ただまあ、葛飾出身の筆者は、モンチッチをよく知っている。子供心に、地元のおもちゃメーカーの製品だと、認識していた。テレビCMで、モンチッチはセキグチとかいうフレーズが出るたびに、うちの近くの会社だ、と、思ったりしていた。葛飾は他にも、おもちゃメーカーが多かった。例えば、タカラとかトミーとか。

で、その昔のものが流行ること自体、レトロ回帰とか、周期的なリバイバルと言えるらしい。その意味で言えば、多分、1970年台のキャラクターデザインは、タイで流行りそうなポテンシャルを持っていると思う。

周期リバイバルを仕掛けることもできるかもしれない。

勝手な思いつきだけど、ロボコンとか、良いと思った。なんとなく、ゆるっとしたフォルムの子供のロボットで、タイ人には多分受けると思う。友達キャラの、ロボパーとか、ロボガキ、ロボワルとかもいい味出しているかもしれないけど、現代では名前が不適切かもしれない。コンプラ的に。

まあ、ロボコンは絶対にタイで流行らせることはできるかもしれない。背景だの、ストーリーだのはなんだかよく分からなくても、あのゆるっとしたフォルムだけで、多分、タイで流行る。

ロボコン会計者の方々、チャンスではないだろうか。とか、勝手な妄想をする。

妄想は自由。
アメージングタイランド。

20260303

CHAGEEはタイで流行か、それとも定着か


 

CHAGEEという店を、バンコクで見ている

① CHAGEEとは何者か

CHAGEE という店を、バンコクで見かけるようになった。

去年、上海に行った時、あちこちでめっちゃ行った店。ミルクティが本当に美味しい。

最初は「また中国のミルクティーか」と思ったのである。だが、店構えが少し違う。妙に上品で、ロゴも静かで、店内は白と木目で整えられている。タピオカ屋の騒がしさがない。

よく見たら、上海で行った、CHAGEEだった。

聞けば雲南省発のブランドらしい。中国茶をちゃんとやる店だという。実際に飲んでみると、甘さよりも茶葉の香りが立つ。ミルクは主役ではなく、あくまで脇役である。
なるほど、これは“茶を売っている”つもりなのだな、という印象である。


② タイでの展開を、街で見る

バンコクでは、中心部のモールで見かけることが多い。路地裏の安い区画ではない。家賃の高そうな場所である。
この時点で「量より質で来ているのか」と勝手に想像する。

タイのドリンク市場は激戦である。安い店はいくらでもある。学生向けの価格帯も多い。その中でCHAGEEは安売りしていない。
これは強気なのか、あるいはブランドを守っているのか。外から見ているだけでは分からない。ただ、焦って増やしている感じはしない。


③ タイで誰が支えているのか