CHAGEEという店を、バンコクで見ている
① CHAGEEとは何者か
CHAGEE という店を、バンコクで見かけるようになった。
去年、上海に行った時、あちこちでめっちゃ行った店。ミルクティが本当に美味しい。
最初は「また中国のミルクティーか」と思ったのである。だが、店構えが少し違う。妙に上品で、ロゴも静かで、店内は白と木目で整えられている。タピオカ屋の騒がしさがない。
よく見たら、上海で行った、CHAGEEだった。
聞けば雲南省発のブランドらしい。中国茶をちゃんとやる店だという。実際に飲んでみると、甘さよりも茶葉の香りが立つ。ミルクは主役ではなく、あくまで脇役である。
なるほど、これは“茶を売っている”つもりなのだな、という印象である。
② タイでの展開を、街で見る
バンコクでは、中心部のモールで見かけることが多い。路地裏の安い区画ではない。家賃の高そうな場所である。
この時点で「量より質で来ているのか」と勝手に想像する。
タイのドリンク市場は激戦である。安い店はいくらでもある。学生向けの価格帯も多い。その中でCHAGEEは安売りしていない。
これは強気なのか、あるいはブランドを守っているのか。外から見ているだけでは分からない。ただ、焦って増やしている感じはしない。
③ タイで誰が支えているのか
タイで外資の飲食をやる場合、だいたい裏にローカル企業がいる。
たとえば、モールを押さえているのは Central Pattana や、The Mall Group である。
CHAGEEがそうした大型モールに入っているということは、何らかのタイ法人スキームを組んでいるはずである。タイは外資規制もある。完全な単独突撃は現実的ではない。
ただし、どこの大手と組んでいるかを大々的に宣伝している様子はあまり見ない。
静かに入って、静かに広げているようにも見える。
もしかすると、まだ様子見の段階なのかもしれない。これは私の推測である。
④ 東南アジア全体の流れ
CHAGEEはタイだけではない。シンガポール、マレーシア、インドネシアなどでも名前を見る。
東南アジア全体を一つの市場として見ているのではないか、と感じる。
中国ブランドは最近、ASEANをかなり真剣に攻めている。資本力もある。物流も整え始めている。
ただ、勢いがあっても残るとは限らない。バンコクでは、派手に出てきて静かに消えた店も多い。
価格勝負の Mixue Ice Cream & Tea と比べると、CHAGEEは真逆の位置にいる。
安さでなく、空気感で売っている。
それがタイでどこまで持つのか、まだ判断はできない。
⑤ 日本に来るのか
では、日本に来るのか。
正直なところ、可能性はあると思う。だが、簡単ではないであろう。
今の日本は、中国ブランドに対してやや複雑な空気がある。政治の話ではなく、感情のレベルである。
さらに、日本は“お茶の国”である。コンビニの緑茶でさえ完成度が高い。
そこに中国茶ブランドが入るには、ただのミルクティーでは足りない。
もし来るなら、「中国茶を再定義する店」として来る必要がある。
中途半端なら埋もれる。
本気なら、面白いことになる。
もっとも、私はただのバンコク在住のおっさんである。
モールで一杯飲みながら、勝手に考えているだけである。
【おまけ】もう少しだけ裏側を想像する
タイで外資ブランドが動くとき、だいたい三つのパターンがある。
-
タイ法人を作る
-
マスターフランチャイズ契約を結ぶ
-
大手グループ傘下に入る
CHAGEEはおそらくどれかである。
モール出店のスピードを見ると、資金はそれなりに入っている。個人の小さな挑戦ではない。
とはいえ、バンコクのF&Bは本当に入れ替わりが激しい。
3年残れば優秀と言われる世界である。
CHAGEEが10年残るのか。
それとも一時の静かなブームで終わるのか。
分からない。
分からないから、面白いのである。
【おまけ・執念編】タイ法人を妄想する
タイでそこそこのモールに入るには、素人が思っているよりハードルがある。
家賃保証、内装基準、法人スキーム、外資規制。簡単ではない。
たとえば、バンコク中心部のモールは
Central Pattana や
The Mall Group
のテリトリーである。
ここに入るということは、
「それなりの資本背景がありますよ」というメッセージでもある。
タイは外国企業が小売をやる場合、Foreign Business Actの枠組みがある。
つまり、完全な単独突撃は現実的ではない。
おそらくはタイ法人を設立し、ローカル資本を入れ、実質的なマスターフランチャイズ型で動いている可能性が高い。
ただし、大々的に「タイの○○財閥と組んだ」とは言っていない。
これは面白い。
巨大資本バックなら普通は宣伝材料にする。
それをしないということは、まだ“静かに試している段階”なのかもしれない。
これはあくまで、街で店を眺めているおっさんの推測である。
【おまけ・下世話編】儲かっているのか問題
ここが一番気になる。
CHAGEEは安くない。
タイの平均的なミルクティーより明らかに高い。
では、粗利はどうか。
仮に一杯150〜180バーツとする。
原材料(茶葉・ミルク・カップ)をざっくり30〜40%と仮定。
モール家賃、人件費、ロイヤルティを引く。
…正直、回転が悪ければすぐ苦しくなる。
だからこそ、路面店ではなく“ブランド空間”で売っているのだと思う。
価格競争をすると死ぬ。
雰囲気と世界観で単価を守るしかない。
安売りの Mixue Ice Cream & Tea とは真逆である。
量でなく、体験で稼ぐモデル。
ただ、タイは体験より価格に敏感な市場でもある。
ここが長期的にどう転ぶかは、まだ分からない。
【おまけ・妄想編】もし日本に来たら
日本に来るなら、戦略は一つしかないと思う。
「おしゃれな中国」
である。
問題は、いまの情勢でそれがやりやすいかどうかである。
日本では、中国という言葉に対して、
品質面では評価しつつも、政治的には距離を置く空気がある。
これは事実である。
だから、
・中国を前面に出しすぎると構える人がいる
・隠しすぎるとアイデンティティが消える
このバランスが難しい。
日本市場で成功するなら、
「中国茶」ではなく
「東洋の茶文化ラグジュアリー体験」くらいまで抽象化する必要があるかもしれない。
東京・表参道あたりに旗艦店を出し、
白を基調にし、
“漢字は最小限に”し、
茶葉のストーリーを丁寧に語る。
やるなら徹底的にやるしかない。
中途半端だと、コンビニのペットボトルに負ける。
結局どうなのか
CHAGEEは、
・価格で殴らない
・文化を売ろうとする
・静かに広げる
という戦い方をしている。
それがタイで定着するか。
日本に来るか。
分からない。
分からないが、
バンコクのモールであの店を見ると、
「これはただのタピオカ屋ではないな」とは思う。
私はただの在住おっさんである。
勝手に勘ぐり、勝手に想像しているだけである。
だが、こういう観察が一番楽しいのである。