2021年10月12日

嬉しい話をしたのにその反応はどうして?

やりがい?


仕事に意欲があって、やりがいがあるということは、とても良いことですよね。

しかしながら、その概念は、もしかしたら日本独特かもしれません。

タイ現地の日系企業に勤める僕の友人の日本人マネージャーが、タイ人スタッフ達を前に朝礼をしました。


「弊社は、今まで、Aのサービスで、皆様の努力によって、計画を達成してきました!!」

「今期から、Bのサービスに、弊社は初めて参入します!!!」

「皆様にとっては、Bのサービスは初体験になりますが、今後の仕事の幅、キャリアの幅が広がる、またと無い、とても大きなチャンスです!!!!!」

「弊社はこれからも、従業員の皆さまがどんどん新しい事に挑戦できる環境、成長できる会社を目指します!!!!!」


友人の企業は、Aというサービスで業績を上げて、今期からBというサービスに参入するという計画を打ち出しました。それをタイ現地のタイ人従業員に向けて説明したという話です。この時期に、景気が良くて、とても良い話です。


ところが、このスピーチを聞いたタイ人スタッフたちが、ポカーンと口を開けたまま、ぼーっとしていました。

タイ人スタッフ達は、明らかにハッピーではありません。一体、何が起こったのでしょうか?

◇ 仕事が嬉しい人いるの?

そこで、タイ人マネージャーが、この日本人マネージャーの話を彼らに分かりやすく意訳というか、説明をしなおしました。

なぜなら、タイ人にとって、この話には補足が必要なのです。


タイ人マネージャー:「今、〇〇さんからのお話ですけど、日本人にとって、新しい仕事に挑戦するということは、ご褒美と同じです。」

タイ人マネージャー:「仕事が増えると思うかもしれませんが、新しい仕事を覚えられるということは、日本人にとっては、ご褒美をもらうことなのです。」

タイ人マネージャー:「ですので、〇〇さんは、皆さんもきっと喜んでいるだろうと思っていたので、それで嬉しそうに皆さんにこの話をしたのです。」


これが、タイ人マネージャーの補足的なコメントでした。

分かります??


新しいスキルが身についたり、仕事やキャリアの幅が広がることのできるチャンスというのは、日本人にとっては、意欲が湧くことで、やりがいのあることなのです。

ところが、タイ人にとっては、Aという仕事だけで充分なのに、なんでBという仕事までしなければならないんだ? なぜ仕事の幅が増えることが、ハッピーなんだ?

という、メンタリティだったのです。

つまり、今までの仕事を続けることで、別に良くて、わざわざ知らない仕事を覚えたくない、というのがタイ人の心理なのです。

この心理を知らずに、日本人、日本社会と同じようなスピーチをしていると、タイではうまくいきません。

タイ人をマネジメントするスキルというのは、日本人にとって、とても難しいことなのです。


どちらが、良いとか、悪いということはありません。

最近、僕は、むしろタイ人のリアクションの方が、正しいのではないか? とさえ、思うところがあります。

仕事とは?

人生とは?

みたいな、結構深い考えにもつながることだったりします。

こういう考えをすること自体も、タイに住んでいるからこそ、かもしれません。


◇ 良いことがあると信じる

では、タイ人は、ただ怠け者かというと、そんなことはありません。

仏教国で、仕事を真面目にすると、良いことがあると信じています。

みんなに優しくすると、良いことがあると信じているのです。


ただ、その価値的基準が、日本人の普通の感覚と外れています。

そこを、日本人は、タイに来る前に勉強すべきかと思っています。


ただし、日本人がそうであるように、タイ人も、全てのタイ人が同じような性格ではありません。もちろん、野心のあるひともいるし、意欲のある人も沢山いますし、日本人なんかよりもよほど頭の良い人も沢山いるのです。

個人的な感覚ですが、そういう、なんていうか、優秀な人は、みんな欧米やシンガポール、オーストラリアに出てしまって、タイに帰ってこないですね。。。



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