2022年3月25日

タイ人金持ちと過ごした衝撃の1日

それは、いつも通りの朝から始まった。

いつも朝からつるんだりしているタイ人たちが居るのだけど、今日は朝から彼らのペースにはまってなんとも消化の悪い1日となった。彼らは全然悪くなくて、結局自分が悪いのだけど、それにしても、彼らの1日の過ごし方は、衝撃というか、ちょっと真似できない。少なくとも、自分には無理だ。でも、過ごしてしまった。

今日1日の終わりに当たって、なんとか意味を持たせようと思ったりして、一生懸命前向きに考えようと思ったりしているのだ。それがせめてもの、自分の1日を無駄にはしなかったぞ、という自己暗示にもなるからである。

貧乏性なのか、なんなのか、全く生産性のない1日を過ごすということは、少し耐え難い。読者の方々も、想像できるだろうか? 例えば、朝の始まりに、今日これから始まる1日が実はすごく無駄に過ごすことになると考えた時に、そのまままるで運命のように無駄な1日に突入するだろうか? もちろん、そういうことは避けるかと思う。なるべく避けるだろう。そして、なるべく有意義な時間を求めて行動するだろう。

もちろん、毎日毎日、これから過ごすであろう毎日が、全て有意義ということではないだろう。例えば、「今日は何もしたくない」と、あらかじめ決めているのであれば、その日は何の生産性のない1日であったとしても、心はハッピーであろう。

.Proプログラミングスクール・フロントエンドコース

貧乏性にとっての地獄

自分は貧乏性だと思う。だから、ぼーっとしていると、損した気分になる。損した気分が自分を掻き立てて、何かをしようとするが、問題はスマートではないので、ただトライして、エラーして終わりというまでがセッツ、、である。とても悲しい。悲しき自分。

地獄とは、フィジカルではなくて、メンタルである。

何もしない日があっても良い。それを望むならば。

しかしながら、今日も1日がんばろう!と、思っている朝だとしたら????

その後の行動が全く生産性がなかったとしたら、それはもう、地獄の時間が流れることになるだろう。今日はそんな地獄にも似た1日を体験した。

地獄と言っても、何か物理的にというか、フィジカルに、痛いとか、苦しいとかということは全くない。むしろ、メンタルの面で、とても苦しかった。

富裕層タイ人の衝撃の1日

ここで、富裕層と言っても、タイの富裕層と言ったら、想像を絶するような富裕なので、そこまでではないと思う。とはいえ、彼らは、日本人が考える「金持ちの人々」という概念よりは、はるかに金持ちである。

感覚的にいうと、金の有る無しが、1から100までだとすると、日本人は平均値50から、上下にばらつきがあり、1番下は多分30で、1番上は多分65みたいな感じではないだろうか。たくさんの人が中間地点にいるのだ。そりゃもちろん、とてつもなく金持ちも存在はする。しかしながら、とてつもなく貧困な人は、少ししかいないと思う。

これを、タイに当てはめると、50付近には誰もいなくて、70以上から10%の塊がある。下は、30までは誰もいなくて、20以下に残りの90%が居るというイメージだ。あくまでもイメージだけど。

つまり、タイの貧困層はとことん貧困で、しかも人口も多い。

タイの富裕層は、とてつもなく富裕で、人口は少ない。その少ない中にも「すごく金持ち」な人が1番下であり、「想像不可能な金持ち」が上の方にいるというイメージである。

想像不可能な金持ちって、例えば、というか実在した人で言うと、イギリスのプレミアリーグのオーナーが居た。キングパワーというタイの会社のオーナーでもある、ビチャイ・スリバダナプラブハを例にとる。

実は彼は2018年にヘリコプターの事故で亡くなった。

1958年、中国系の両親のもとタイ王国に生まれる。1989年に免税店のキングパワーを設立し、財をなした。2010年にプレミアリーグ所属のサッカーチームであるレスター・シティを買収。継続的な投資によってクラブを発展させ、2015-16シーズンにクラブは創設以来初のリーグ優勝を成し遂げた。

2018年10月27日、自身所有のヘリコプターがレスター・シティの本拠地キング・パワー・スタジアム近くの駐車場に墜落[1]し、同機に搭乗しており死亡したことがクラブにより翌日発表された。60歳没。(ウィキペディア)

資産は、3700億円とか言われている。自分のサッカーチーム、自分のスタジアムがあり、ヘリで行ったり来たりしていた。イギリス国民にとても愛されていたらしい。 

金持ちという概念をわかりやすくするために、ビチャイ氏を例としてあげたけど、とにかく日本人の概念からは外れていることは間違いない。


ものすごい金持ちだが、金持ちの中では下の方なのかと思う

いつもつるんでいるタイ人友人は、そこまでではないものの、日本人的な感覚で言えば、ものすごい金持ちである。間違いなく、日本人の金持ちよりは金持ちである。

ただ、性格もあるのか、質素な生活をしている。そしていつも金のことを言っていて、ちょっとケチな感じのする人である。

親の世代から受け継いだ土地、家、そして金を持っている。親から受け継いだ金で、自分である製造業を起こして、ビジネスをしている。工場や設備もあるけど、借金とかそういうのは無縁だ。

実を言えば、本当はそんなビジネスなんかする必要もないのである。なぜなら、十分なカネが既にあるからである。親から受け継いだカネではあるけど。

ただ、彼にとっての問題は、毎日毎日暇なのである。もちろん、ビジネスは動いているけど、大半は人に任せているし、自分ではやることはあまりない。

で、自分みたいな仲良しを見つけると、まず朝ご飯から始まって、ぐるぐるバンコク周辺をあちこちに移動する。それで1日が終わるという、衝撃的な生活をしているのだ。

何が衝撃かといえば、全く生産性のない1日を、毎日毎日送っているのである。

しかも話すことといえば、本当にくだらないことばかり。

別に彼は悪い人間ではない。むしろ、良い人だ。なぜなら、自分のことを色々と誘ってくれる。そして、奥さんも子供もいる。今日は、奥さんも一緒になって、あっち行ったりこっちに行ったりした。そしてくだらない話をたくさんした。

途中で、この生産性のない1日にゾッとしそうになった。

であれば、自分は途中で、バイバイすればよかったじゃん、と強く思う。しかしながら、ついつい流されてしまうことがある。いつもは意志の強い人を演じているけど、時々変なところで、レイジーなボタンが押されてしまう日がある。

今日はまさに、レイジーな日だった。ただし、レイジーと言っても、生産性の無い1日は過ごしたくない。例えば、自分が行きたいと思っていて行っていない店とか、街とかが結構ある。そういうところに行くというのが、レイジーな日の自分の定番である。レイジーではあるけど、無駄に過ごしたくは無いのだ。

で、今日はそのタイ人金持ちの雰囲気になんとなく飲まれて、なんとなく追随してしまった。用もなくモールに行き、要もなくホームプロに行った。

大手のスポーツジムで、子供のためのスポーツクラスがあるというので、その情報を聞きに行った。

ベイトンというタイ南部のチキンで有名な地域があるのだが、そのベイトンの鶏を使ったカオマンガイの店があるというので、そこに行った。金持ちでも、食べ物は安いものが好きなのだ。

たい焼きクロワッサンとかいう、昔はエンポリにもあったらしいけど、今は少し外れた、家賃の安そうな施設にしか入っていない食べ物屋があるのだけど、そのたい焼きクロワッサンを買った。たい焼きクロワッサンに関する全ての会話が、耐えられないくらい暇だった。例えば、日本ではたい焼きは美味いのか? とか、クロワッサン生地のたい焼きは日本にはあるのか? とか。などなどである。

BLACKPINKの話をした。なぜなら、メンバーのLISAが今ちょうど休みでタイに帰ってきている。休みだからというのもあるけど、ちょうど隔離もなしでタイに入国できるようになったので、このタイミングで帰ってきたのであろう。そのLISAが昨日訪れたムーガタの店に、前に行った話とか。

その延長でK-POPの話とか。その延長で、アイドル全体の話とか。K-POPが流行る前は、全部日本のカルチャーがメジャーだったとか。

あるモールの入り口にTao Binの自動販売機があり、それは今とても話題になったりしていたので、その株式の話とか。で、その株はギャンブルだからやめた方が良いとか言われたり。

まー、とにかく、そんな話をして、日がな1日終わってしまったのである。

今日の朝、目覚めた時から考えると、想像をしない1日を過ごしてしまった。

きっとこんな日もある。

そして、その人はいい人だから、その人のせいにしてはいけない、と自問自答している。

そして、きっと良い1日だったに違いないと、自分に言い聞かせている。今日のこの日を、どのように捉えれば、どのような解釈をすれば、良かった! ということになるのか、まだ答えは出ていない。

🔸

寝るまでに、答えを見つけたい。

答えを出さずに、いつまでも、居られない。。

2022年3月20日

【小説】英語世界の埋没1

突然、世界が日本語に

「アクセントがまだ少しおかしいですから、それを早く修正してくださいね。では今日のクラスはこれで終わりにします。」

プライベートのレッスンが終了して、ちょうどお昼の時間になった。ジョージ・フレッチャーは、些か不貞腐れながら、日本語クラスを後にした。日本語しかできないくせに威張り散らしている日本語教師がとにかく気に入らなかった。一歩外に出ると、マンハッタンの強い陽射しに一瞬目を瞑った。

ランチタイムであるしお腹は空いている。いつもの場所に向かうと、いつもの様に、デイビッド・タカハシが独り、どっしりという雰囲気で、狭いベーグルショップのカラフルなベンチに腰掛けながらロックスサンドを頬張っているのが見えた。ジョージはデイビッドの方にトボトボと歩み寄って行った。

例年になく雪の多かったニューヨーク、アメリカ東部も、春の気配が日に日に増してきていた。ビルとビルの間の隙間に溶け残った雪が、ビル間から大通りに吹き抜ける、マンハッタン独特のビル風を冷やしていた。

「ヘーイ!」と声をかけながら、ジョージはデイビッドに軽く肘でタッチすると、先に食べ始めているデイビッドを横目に、メニューが目に飛び込んできた。いつもの店なので、メニューはほぼ知ってはいるが、日本語がぎっしりのメニューに今初めて気づいた。

「おいおい、日本語メニューしか置かなくなったのか?この店は。」

口の中に入ったロックスサンドを少し急ぎめでもぐもぐして、飲み込みながら、デビッドは口を手で押さえながら、徐に答えようとした。

「あのね、もう、トレンドが日本語なんだよね…。NYもLAも、日本語のメニューしか置かなくなったみたいだよ。」

尚ももぐもぐしながら、そのうちに全米でレストランのメニューは日本語だけになるかもしれないというような、恐ろしい予想をデイビッドが誇らしげに言ったのが聞こえた。

日本語が主流になったのは、この3年くらいの出来事である。グローバルのマーケットにおいて、日本企業が、売上高上位を100位まで独占した結果、日本はついに英語でのミーティングを全て日本語に切り替えた。

なぜなら、英語人材不足による理由である。それまでの英語中心の世界では、日本企業もグローバルではとにかく英語力のある人材を獲得することが必須事項になっていた。もちろん、英語が得意な人材は結構居るが、まだまだ苦手とする人口の方が圧倒的に多いことは事実である。

特にソフトウェアやハードウェア、ネットワークのエンジニアにとっては、英語力を必要以上に求めて、スキルのある人材を見落とすことは、企業としてマイナスであることを誰かが提唱してきた。

そもそも、日本企業が世界のビジネスのほとんどを供給しているこの状況を考えれば、日本人が敢えて英語を勉強する必要もなく、むしろ、海外で日本企業と取引をしたい国の人に日本語を身につけてもらった方が、ビジネスの加速が数倍も早いことに、日本国は気づいたのだ。

我々が英語を習得しなくても、我々の製品やサービスを欲している人が、日本語を勉強すれば良いのだ。時の政府は、戦後史に残るような大胆な決定を下した。

  • ビジネスの世界で、日本語をそのまま使う。日本企業と取引したい人には日本語でのコミュニケーションを求める。
  • 義務教育過程において、英語科目を撤廃する。

この決定で何が起こったかといえば、当初反発も示していた欧米をはじめとする外資系企業も、結局は、日本企業とのやりとりが必須であるが故に、日本語での対応を検討し始めた。世界の企業人は、日本語を勉強し始めたのである。

全米、いや、世界での日本語熱は高まるばかりである。ニューヨークやロスアンゼルスのレストランでは、とうとう英語メニューを撤廃する動きも出てきている。それがそれがトレンドに載るということなのだ。

「もうねえ。日本語は避けて通れないからさ。」
デイビッドが不貞腐れているジョージに話しかけた。

「気持ちはわかるけど、ちょっと踏ん張った方が良いよね。今、日本語の勉強を踏ん張らないと、5年後10年後の給与にかなり響くぜ。」
不貞腐れているジョージを不憫に思い、デイビッドはそれでも優しく諭すように、ジョージに言った。

確かに、アメリカ人にとって、いや、世界中の国の人にとって、日本語の習得は難しい。

しかしながら、日本国、そして日本企業が一斉に基本言語を英語から日本語にシフトしてしまったために、アメリカ含め海外の人々はビジネスをするためには日本語がどうしても必要な状況になったのだった。

グローバルのビジネスは、日本企業との関係構築をしなければ、何も進まない。

アメリカの過激な大統領候補は、日本は敗戦の腹いせを経済で復習しようとしていると言い、日本に対してネガティブキャンペーンを張っていた。

「今行ってる日本語会話、ダメだね。なんか、ビジネスライクだから。」
ジョージは、今習っている日本人の日本語教師がとにかく好きではなかったのだ。そんなに嫌なら、金出してまで行く必要はないと、自分でもわかっていた。が、とにかく勉強しなければならないことには変わりなく、いちいち教師を変えるのもなんとなく面倒だった。

「もっと可愛い、セクシーな日本人の日本語教師、紹介するよ。やる気出るだろ。」
デイビッドは、友人の日本語教師、ヨリコ・ワタナベのフォトをジョージに見せながら、さらに続けた。

「まあとにかく、彼女もアメリカ育ち。英語もできるし、日本語教育法ではマスター持ってるから。それに、もう、この写真見れば、説明いらないだろ。」


◇  ◇  ◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

日本語反対!!

日本企業が、日本語に舵を切り始めたのは5年前。その前は、日本の義務教育では英語が必須だったが、もう今は撤廃されている。

グローバルの売上の100位までを独占している日本企業が、一斉に日本語に舵を切った途端、日本人は英語を勉強する必要がなくなったからである。日本政府が、英語の必修を撤廃したのは、3年前のことである。

「何しろ、世の中の言語がみんな日本語に変わりつつあるからな。英語勉強したって、せいぜい、英語圏のおねいちゃんとデートできるくらいしかメリット無いよね、今となっては。」

ランチの帰り道も、ジョージの脳裏には、デイビッドから言われたことがリフレインしていた。ふと、ジョージはヨリコ・ワタナベのWhatsAppをタップした。

それにしても、日英バイリンガルのデイビッドはとにかく楽しそうである。そして給与も上がった。特に日本語を話す時点で、相当数の機会が増えたのだ。

今となっては、バイリンガルである必要もあまりない。日本語さえできれば、それで良いのだ。英語が話せることに関しては、特段、良いこともなかった。

言語学が好きで、英語に興味のある人は、英語を勉強するだろうが、全ての人が英語に取り憑かれる必要は、もうないのだ。

時代は変わったものである。

アメリカもヨーロッパも、アジア圏も、ビジネスでは全て日本語が、今となっては常識である。フィリピンやネパールでは、公用語を日本語に変えることがすでに決定し、来年から施行されることになっている。


ロックフェラーセンターの前を通りかかると、夥しい人々の群れがけたたましく叫んでいた。よくあるデモ行進だろうと、ジョージは思ったが、少し毛色が違う。

「日本語、反対!」

「言語差別 反対!」

叫んでいるのは、日本語でのビジネスに反対する団体であった。彼らの主張は、ビジネスで日本語を使うことは、言語による差別にあたるというものだった。

へー。言語差別ねえ。

よく見ると、彼らは国際司法裁判所に、提訴しているらしい。
「みんな、よくそんな暇あるよな。そんな暇あったら、日本語勉強しちまった方がよくねえか?」

と、心の中で呟きながら、5番街を南へと歩いて行った。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


「うるせえなバカやろー!!」

ジョージは、道を聞いてきた日本人に言い返した。その日本人は、日本語でジョージに話しかけて、道を聞いたのだ。

そもそも道を聞かれるときに日本語を使われることは、アメリカではよくあることだった。英語ができない日本人がとにかくたくさんアメリカに居て、日本語だけで生活をしている。さらに、アメリカそのものが、日本語がすでにトレンドになっていて、教養のある人なら簡単な日本語の会話もできるという状況になっていたので、日本語で突然話しかけられるというのは普通のことだった。

ジョージは、なぜ、その日本人に対して怒鳴り散らしたのかは、わからない。普段なら、そんなことはしないのだ。

日本人は、オロオロして、その場から逃げていった。

花粉症に。日本では「アレグラ」です。